2025年10月10日

箸屋一膳

大きなお箸が出迎える、川沿いのお箸工房

 

由布岳を見上げる川沿いに、「箸屋一膳」はお店を構えています。店舗の壁には、大きなお箸が飾られており、一目でお箸屋さんとわかる佇まい。ここは、ご夫婦で営む小さな工房兼お店です。作っているのは、毎日の食卓に寄り添う“日用品”としてのお箸。

お二人が大切にするのは、地元の木を使い、さらに木の性格や特徴を見極めて、気持ちよくするりと手に収まる美しいお箸に仕立てること。様々な木の種類には、ひとつひとつ、花言葉のように木が象徴する言葉が添えられています。木によっても色や模様がさまざま。お店に並べられている、たくさんの形や長さのお箸を体験しながら、“自分の手に合う一膳”や“大切な人への一膳”を探すことができます。日々の食卓に、ちいさなぬくもりを添えて——その小さな灯りこそ、お二人のつくりたい世界です。

 

「切るためではなく、切られたから活かす」

 

主に材料に選ぶのは、湯布院や由布市内で育った木々。間伐や工事などでやむを得ず伐採された材を中心に、どこで育ち、なぜ切られたのかがわかる木を使います。無理に新しい木を切るのではなく、地域の循環の中で生まれた材を活かす——その選択が、湯布院の風景を守ることにもつながっています。取り扱う木は約30種類にのぼり、それぞれの性質に合わせて一本ずつ仕立てます。それ以外にも、台風で倒れてしまった国東のオリーブの木だったり、お酒用の樽の木だったりと多種多様。

 

 

サラリーマンから湯布院の木工職人へ

西原さんの原点は、会社員として家具の販売に携わったことがきっかけだったそう。もともと自作でテーブルを作ってしまうほどDIYが好きで、そのうち、「誰かのつくったものを売るだけでなく、自分の手で作りたい」と考えるように。その思いから、湯布院でのまちづくりと木工に携わる研修生の募集に応募したことが現在の工房を開くきっかけになっています。木工技術は湯布院の木工工房で5年間の研修を受け、様々な技術を習得しました。その際に、師匠から言われた「たくさん、まちに出なさい」という言葉に忠実に、地域のお祭りや行事に参加するように。木工の勉強をしながらも、まちづくりの活動で培ってこられたたくさんのご縁が、今も湯布院で長く工房を続けられている理由になっている、と西原さん。今や湯布院のイベントには欠かせない一人となっています。

 

 

旅の記憶を手の中に——箸づくり体験

箸屋一膳でのもう一つのおすすめの楽しみが、工房での箸づくり体験。小刀とサンドペーパーで形を整え、仕上げに焼きペンで模様や文字を入れる——「世界に一つの一膳」が生まれる体験です。所要時間は約2時間。完成後は工房で防水コーティングを施し、ご自宅へ発送します。「ご結婚前に箸づくりに来られたお二人が、結婚後に子どもさんと一緒に体験に来てくれたんです。もうその子どもさんも自分でお箸がつくれるくらい大きくなっていて。ほかにも、新郎が新婦に内緒で、結婚式用にお箸を作りに来たこともありました。」と嬉しそうにお二人は話します。

 

「食べることは生きること」
食べる場所に必ずあるお箸が、食卓にほんのりと灯りを点してくれるものだとしたら、それはその人の人生そのものが、少しずつ豊かになっていくことにつながるのだろうなと、お二人の経験談を伺って感じました。

 

湯布院のまちと人の架け橋に

箸屋一膳の活動は、工房の中だけではなく工房の外にも広がります。湯布院で長く続けられている、牛喰い絶叫大会のステージをつくったり、地元の小学生とお箸を作ったり。ゆふいんラヂオ局での情報発信にも関わり、まさに地域をつなぐ“橋”の役割も担っています。人々の暮らしに欠かせないお箸をつくっている箸屋一膳は、湯布院のまちに欠かせない存在になっているように感じとれました。
風景を守る間伐材を活かし、旅の思い出を形にし、毎日の食卓を少しやさしくする。お二人の仕事は、ものづくりでありながら、実は“まちづくり”そのものだと感じました。ぜひそんなあたたかな循環のなかで育まれる一膳のお箸を手に取ってみませんか。

2025年7月30日

オニパンカフェ

雄大な由布岳のふもと、由布岳スマートインターチェンジから一般道に降りると、もう、そこは森のなか。
新緑の木立ちが由布岳から吹き降ろす風にそよぎ、まちなかの喧騒を忘れてひととき、ふと、自然のなかに溶けこむような気持ちになるのが、ここ、塚原高原です。

 

くねくねと森の中の道を走ったあと、一本道のなかほどに、こぢんまりとしたパン屋さんが佇んでいます。
オープン前から、駐車場には多くのお客様の車が並んでいます。お店の中にはたくさんのできたてパン。そして棚にきれいに勢ぞろいする食パンたち。

ここ、「オニパンカフェ」のマスター、日浦晃英さんにお話を伺いました。

 

 

 

小麦から作ろう。究極の「自家製」食パンへの挑戦。

オニパンカフェでは、パンづくりにおいて「自家製」に徹底的にこだわっています。当初からこだわっている自家製酵母づくり。そして、もう一つが塚原高原での小麦づくり。小麦は、パンの味を左右するとても大事な素材です。一般的にパンづくりは、海外産の強力粉が主流でしたが、今では国産小麦も海外産に劣らない品種が登場し、オニパンカフェでも国産小麦を主に使用しています。現在、その小麦を塚原高原で作ろうと挑戦をしています。

 

「小麦づくりを始めたのは、外部の素材に依存するのではなく、自分たちで育てた小麦でパンを作りたかったからです。専業農家ではないから、やっぱり両立は大変ですね。最近は、鹿対策がなんとかできたものの、今度は兎にやられました。」
さらに近年の異常気象も加わり、なかなか思うように小麦づくりは進まないと言います。それでも自家栽培を続けることで、「自家製」への挑戦を続けています。

 

「〇〇さんのために」から生まれた超こだわり食パン。

オニパンカフェの商品のなかで、マスターが特におすすめするのはこだわりぬいた「食パン」。“やっぱり食パンは主食だから”と日浦さんは言います。

その中でも特別な思いをもって作られたのが「玄米食パン」。国産小麦粉をベースに焙煎玄米や雑穀、クルミをたっぷりと使用したこの食パンは、しっとり、なめらかなパン肌に、もっちりとした噛み応え。そのまま食べても香ばしく、甘い香りが広がります。これは食事制限のある、糖尿病の方の願いを受けて日浦さんが開発したこだわりの食パン。健康に気を使う人にとって理想的な一品として仕上がりました。誰もが食べたいものを安心して食べられるようにとの思いが込められています。

 

新たな挑戦~自家製にこだわった究極メニュー「ワインの友セット」

ふるさと納税で提供している「ワインの友セット」。このセットは、自家製にこだわったメニューを組み合わせた究極のセットメニューです。この商品も、ワイン好きなお客様の「ワインに合うメニューを作ってよ~」というひとことから誕生しました。このセットには、オニパンカフェで燻製にされた大分県産豚肉の自家製ベーコンが特別にセットになっています。あまり聞き慣れないパンの名前も、ワインに合うパンをこだわり抜いた組み合わせ。
「一人でもいいし、みんなで食べてもいいし、色々な過ごし方でパンとワインを味わってほしいんです」

 

 

パンづくりは「仮説実験授業」!

パンづくり一筋の日浦さん。けれどもパン職人になる前は、小学校の先生だったそう!教員時代から、パンが大好きで、小学校でもパン教室を開くほど。そして日浦さんが特に思い出に残っているというのは「仮説実験授業」。子どもたちと仮説をつくり実験を繰り返し、仮説どおりに進むかを実験し、「できた!」「できなかった!」を一緒になって、喜んだり、悔しがったり、考えたり・・・
そして今、日々酵母に向き合い、パンを作るようになり、試行錯誤を繰り返す中で、ふと「パンづくり」はあの時の「仮説実験授業」なんだ!と気づいたそうです。
「パンづくりって、本当に実験の連続。だからとっても面白い。物事も考えようで、ちゃんと自分のなかに課題を設定して、どうしたらそれができるか、毎日実験している。だから、毎日発見がある。だから飽きるということがないんです。」

 

これからは、若い人たちが夢を持って生きられるような仕事になったらいいな、パン屋っていい仕事だね、と言ってもらえるような挑戦をしていきたい、自分は、今も変わらず「先生」なんだ、と話す日浦さん。
私たちが取材に伺ったその日の朝、新しい酵母づくりに成功したとのことで、「とても気分が良い!」と上機嫌の笑顔でした。
小学校の教師時代、子どもたちと一緒に仮説実験授業で夢中になっていた日々を、今は塚原高原の自然のなかで、若いスタッフの方々と生きている酵母たちと共に、今日も究極の「自家製」パンを求めて実験を繰り返しています。

2025年6月10日

木草舎(もくそうや)

深い峡谷の傍の高台に、木をふんだんに使った日本家屋。伝統的な建築方法で作られた建物は、どこか懐かしく、けれど新しい雰囲気をまとった解放感のある造りになっています。

この場所は「赤野の森」。週に2回のカフェ営業と、月に数回の自然観察会などを行っています。建物の奥にまわると、そこは峡谷に沿って広がる田んぼと、目の前には雄大な高崎山。谷からみると小高い場所に建つ赤野の森には、谷からの風と光が差し込みます。ゆっくりと流れる自然の空気のなかで、時間を忘れて滞在してしまう、豊かな場所。

 

 

大分県由布市赤野で、簑原聡子(みのはらあきこ)さんは、簑原工務店を営むご主人とともに、この「赤野の森」を作りました。週2回、カフェの営業を行い、月に数回、自然観察会の開催を行っています。それ以外の時間には、子育て中のママさんたちが集まり、ゆったりとコミュニケーションを深めながら、時に子どもたちと遊びながら、「大切にしたい景色や記憶をカタチに残す」をコンセプトに木の動物や小物づくりを行っています。

 

 

木の小物づくりは、「木草舎」として活動されています。午前中、少しずつお母さんたちが集まってきました。カフェの庭の一角には、五右衛門風呂にくっついた小さな屋根付きのスペース。そこが木草舎さんの小さな工房です。テーブルの上には、作業に使う道具や、作業途中の材料が手際よく並んでいきます。めいめい、つくる小物の形に合わせて、リズミカルにヤスリをかけていきます。作業に夢中のお母さんの背中では、赤ちゃんも気持ちよさそうに寝息を立てながら。

 

木草舎の活動は、6年前から取り組みはじめたそう。20人ほどいるメンバーのうち、その日に集まれるママさんたちが、子育ての悩みを共有したり、色々なお話をしたりしながら楽しく活動されています。たまにおしゃべりに花が咲きすぎることもあるんですけどね、と笑顔の簑原さん。

始めたきっかけは、当時主催していたイベントで、身近な自然の動物を木で作ってみたこと。その活動のなかで、「子育てしながらでもものづくりができるんだ、自然に抱かれたこの景観、環境の中で子育てをしているからこそ、生み出せるものがある」と気づいたそう。その経験を機に、子育て中のママさんたちと、木の小物づくりを始められました。

 

 

商品のアイデアは、身近なところにあるのだとか。あるときは、メンバーのおばあちゃんから「30年前にカワウソが川にいたんだよ」という話を教えてもらって、カワウソの置物が生まれたり。

「コロナ禍では本当にやることがなくて、命を育んでみようと思い立って、鶏の卵を孵化させてみることにしたんです。そうしたら、たくさんのひよこが生まれて。すると大きくなって卵を産むようになって。それで、「花たまご」というたまごを置く商品が生まれたんですよ。」

何気ない会話や日常のなかで生まれる小物たちには、かわいい物語がたくさん詰まっています。ひとつひとつ手作りの商品のため、名入れをすることも可能。若い男性からも買っていただくことも多く、プレゼントにも喜ばれているそうです。

 

 

赤野の森ができたことで、場が整いました。ひとつひとつの取組を大切にして、育てていきたいと考えています、と簑原さん。

日本は森の国。世界でみても、森林率は先進国の中で第3位である日本。伝統構法で木をたくさんつかっているカフェ「赤野の森」や、ママさんたちと作る木の動物たちや小物を通じて、木や森から自然を感じてもらいたいと思っています。

「ここのカフェも自然体験のひとつですね。もっとにぎやかな場所になるといいなと思っています。そのためには、これからもどんどんチャレンジをしていきたいですね。」

ぜひ、「赤野の森」に訪れてみませんか。そして「木草舎」の木の小物たちを通じて、日本の森や自然に触れていただきたいです。

2025年3月14日

ゆふいんwakoya

蓋を開けた瞬間に甘い香りが広がり、手にした人が温かな気持ちに包まれる小さな幸せの詰め合わせ。華やかな赤色が目を引く真四角のBOXを隠れ家に、身を寄せ合うようにほのぼのと過ごす小鳥や猫、犬のかたちをした愛らしいクッキーは、由布院の小さな焼き菓子工房で1枚ずつ丁寧に手作りされています。お店の名前は『ゆふいんwakoya』。

オーナーである伊藤美羽子さんは、東日本大震災が起きた翌年2012年に三重県から大分県由布市へ移住し、2016年このまちにお店を構えました。

JR由布院駅から徒歩5分程の場所にありながらも、人通りの少ない場所にひっそりと佇む工房はどこか隠れ家のような雰囲気。けれどひとたび扉を開けると、甘く香ばしい香りに心が華やぎます。

子育てを通じて食の大切さに触れ、新天地となる由布院でさまざまな価値観に触れた伊藤さんがお菓子づくりにおいて大切にしているのは、まず1番に身体への優しさ。

動物性食材や白砂糖を使わず、クッキーの種類ごとにメイプルシロップや蜂蜜、米飴、花見糖(はなみとう)をはじめとする甘味などの素材を使い分け、多層的で深みのある味わいに仕上げます。また、wakoyaのおやつで忘れてはいけないのが、大分県産の地粉(小麦粉)と由布市育ちの地粉(米粉)の存在。大分の気候風土を活かして栽培された地粉はクッキーに個性を与えてくれるため、食べた人は地域の味わいを五感で感じることができるのです。

 

「小麦粉や米粉の産地が変わると、こんなにも焼き上がりの味わいが変わるのかと私自身も驚いています」と、笑顔で話す伊藤さん。

返礼品の中でも人気の高いクッキーの詰め合わせ「すこやか おやつ」缶は、伊藤さんのこだわりを思う存分に味わうことができます。ひとつの缶で楽しむことができるのは、口に運ぶのをためらってしまうほど愛らしい動物モチーフのクッキーのほか、大分県産地粉(小麦粉)に紅芋粉を混ぜた花型クッキー、オーガニックのココナッツフレークをふんだんに使用することでサクサクの食感を引き出し、焼き上がりにまぶしたヒマラヤ岩塩の塩味をアクセントにした米粉ココナッツサブレなど10種類以上。自分へのご褒美にはもちろん、大切な人へのギフトに喜ばれること請け合いです。

 

また、伊藤さんよりもうひとつのおすすめと教えてもらったこちらの商品、「豆乳いちごアイス」のチェックもお忘れなく。新鮮な由布市産いちごをたっぷり贅沢に使ったアイスは減農薬栽培の大豆の豊かなコク、豆乳ならではのすっきりとした後味を楽しむことができます。驚くことに伊藤さんが工房内で豆乳を手作りしているんですよ。

ひとつひとつ丁寧に作られた焼き菓子やアイスクリームは、小さなお子さまのおやつデビューにもぴったり。素材に気を配ったシンプルで優しい美味しさを、ぜひ大切な人と一緒に楽しんでみてください。

2025年2月26日

purify with.

いつか訪れてみたいと願う憧れの場所。記憶に残る懐かしい場所。あなたにとって由布院はどんな場所ですか? アロマ専門店『purify with.』は、大分県に滞在した際に感じた心地の良い感覚や美しい自然。まだ見ぬ土地の風景を投影させた香りなど、天然の精油から生まれた高品質のアイテムを届けています。

 

個性豊かなショップが軒を連ね、雑多で活気のある雰囲気が魅力のJR由布院駅前から続く由布見通り。多くの人々や多様な言語が行き交う通りを歩いていると、ふっと漂ってきた優しい香りに思わず足が止まります。その正体を突き止めるべく視線を泳がせ、慎重に辺りを見渡しながらゆっくりと再び足を前へ…。すると通りの喧騒を感じさせない、グレイッシュなトーンの内装が美しく、美術館のようなアロマショップにたどり着きました。

優しい笑顔で出迎えてくれたのは、店長の浅香遙さん。

店内に並ぶ商品は全て専属の調香師が天然の精油を巧みに組み合わせ、商品化まで一貫して行ったオリジナルアイテムだそうです。さらに驚いたのは、調香の舞台がこの店舗内に併設された工房であるということ。

合成香料や保存料は一切使用せず、調香師が繰り返し行う自然との創造的な駆け引きの拠点がこの場所だとは考えもしませんでした。

 

気になる商品はインテリアとしても活躍するディフューザーと、携帯に便利なスプレーの2パターンがあり、返礼品で紹介されている香りは全8種類。その中でもおすすめは、大分や由布院の色彩や空気、気配を天然精油でデザインした4種類だと浅香さんは話します。

 

 

まずは、穏やかな風に吹かれつつ辻馬車に乗り、由布岳を背景に広がる美しい里山の風景に心癒される…という観光のワンシーンを連想させる温かみのある香りの「風靡(fuubi)」。

 

次は和の香りであるヒノキをメインに、西洋ヒノキのサイプレス、オレンジ、ラベンダーなどを配合した、穏やかな森の香りを連想させる「朝霧(asagiri)」。その名の通り由布院盆地をすっぽりと包み込む幻想的な朝霧の光景をイメージしています。

 

心地良い秋風に包まれた由布院の夜景を香りに投影させた「月白(geppaku)」は、甘く透明感のあるクチナシをメインで配合。リフレッシュしたいときや気持ちを前向きにしたいときにぴったりな1本です。

 

そして最後に紹介するのが、大分県の特産品であるカボスを中心に、ラベンダーやベルガモット、レモンなどを合わせた「翠水(suisui)」。個性的で爽やかなブレンドがストレスを柔らげ、明るい気持ちにさせてくれます。

 

自然そのものの繊細な香りを楽しめることはもちろん、その先に待つ“癒し”も天然精油ならではの魅力。消臭や虫除け、空気清浄にも使えるなど様々な場面で活躍するアイテムは、世代を問わず贈り物としても喜ばれています。

 

2025年1月28日

由布院 ときの色

JR由布院駅から続く由布見通り沿いに佇み、軒を連ねる数々の土産店や飲食店の中でもカラフルなロゴが一際目を引く『ときの色』。2017年にオープンしたこちらのお店は、由布院温泉旅館組合前事務局長の経歴を持つオーナーが手がけるガトーショコラ専門店です。

明るい陽光が差し込む店内に一歩足を踏み入れると、ガラスケースの中には色や形の個性豊かなガトーショコラがずらり。その奥で清潔な制服に身を包み、商品を愛おしそうに見つめていた男性がオーナーの安部順一さんです。

観光という視点から長年に渡って由布市を盛り上げ、多くの人々との絆を深めてきた安部さんがなぜ食の世界へ?そして、たどり着いた先もなぜ、ガトーショコラだったのでしょうか。

 

安部さんに疑問をぶつけてみると、実は前職の時代から“自らの手で生み出したもので観光者と直接のコミュニケーションを図り、地域の魅力を伝えていきたい”という思いを抱いていたと語ります。

 

そして仕事の軸足をいかに移すべきか方法を模索していたとき、偶然出会ったスイーツが一切れのガトーショコラ。料理人の友人と由布院について語り合っていた際、たまたま分けてもらったチョコレート菓子を手にした瞬間、目の前に悠然と佇む由布岳とのコラボレーションを思いついたのだと言うのです。

ガトーショコラのチョコレート色を目にした際に頭に浮かんだのは、枯れ草に火をつけると炎が山肌を駆け抜け、パチパチと音を立てながら辺りを黒く染める野焼きの風景。そこから安部さんの修行の日々は始まり、ついに完成したのが西峰・東峰の2つの頂上を持つ双耳峰の活火山であり、その美しく荘厳な姿から“豊後富士”とも呼ばれる由布岳をイメージしたガトーショコラでした。

さらに「華やかな温泉観光地の舞台裏には、必ず生産者や料理人の姿がある」、と安部さんは話を続けます。現在も地域には多くの農村風景が残っていることから、商品には地元産の米粉を採用。清らかな水と高原の寒暖差で旨味を増した湯布院米による商品は、グルテンフリーのおやつとしても注目を集めています。

特におすすめなのは、一口食べた瞬間から優雅な茶葉の風味が心を満たしてくれる3種類の味比べが楽しめる「和っ茶ショコラセット」です。和紅茶、ほうじ茶、福岡県八女市産の抹茶それぞれとホワイトチョコレートを組み合わせたガトーショコラは、移りゆく由布岳の四季の色をイメージしています。山肌を染める若草色が映える春から夏にかけての由布岳、暖色系にそまり温もりが感じられる秋深まった由布岳。

シンプルなビジュアルの中にこだわりを詰め、丁寧に焼き上げたスイーツは、由布院の旅への想いを高めてくれるはずです。

2024年12月23日

こちょぱん

温泉観光地として栄える由布院の賑やかなメインストリート・湯の坪街道とは異なり、ゆるりとした時間が流れる“花の木通り商店街”。地域とともに変わりゆく時代を生き、変遷を見守ってきた昔ながらの通りには、2011年の開店以来、地域の人々に愛されるパン屋さんの姿があります。

 

家族の朝ごはんや子どものおやつ、久しぶりに再会する友へのおもてなしに。

商店街の一角で営業する『こちょぱん』には、地域の方々からお母さんと一緒に手を繋いでやってくる小さな子ども、ビジネスマンまで、幅広い世代のお客さんが日々そのドアを開きます。

 

そして愛らしくユニークな店の名前は、意外にもオーナーである里見真由美さんの旧姓“古長(こちょう)”に由来しているとのこと。

 

「“こちょうのパン”だから“こちょぱん”。肩肘を張らずに私らしく、子どもでも読める店名にしたかったので決めてしまいました()」。そう話して穏やかに笑う里見さんは生き生きとした明るい笑顔が印象的な女性で、東京のベーカリーで修行を重ねた後に生まれ故郷である由布院に店を構えました。

 

そして開店からしばらく経った頃に誕生したのが、返礼品として全国に届けている「おんせんベーグル」です。国産小麦や国産大豆をはじめとする材料を厳選し、独自の製法で仕込んだ生地を、焼き上げる直前に温泉に浸からせた人気商品は、温泉効果により食べ心地はしっとり。冷めたままでももちもちとした食感を楽しめ、一般的なハードタイプのベーグルとは異なる味わいに仕上がっています。

 

商品が誕生したきっかけは、観光でこの地を訪れた人々に “由布院らしいパンを届けたい”と考えたことから。「地域密着型のパン屋であっても、土地柄、旅行者のお客様も多く来店します。けれど以前は地域の特色を活かした商品は販売していなくて。遠方から来てくれた人々に喜んでもらうためには、お店の顔となる名物パンを作る必要があると思いました」。

 

試行錯誤の末にひらめいたのが、以前からファンの多かったベーグルの製造過程に温泉水を用いてみること。源泉数は約900、湧出量全国第3位を誇る由布院温泉は、名峰・由布岳の麓のいたるところから天然の湯が湧いているため、里見さんも幼い頃から天然の湯に親しんできたと言います。

 

そして里見さんが試しにベーグルを温泉で茹でてみると、驚くほどに生地が艶めき食感はもっちり! 密度の高い、ギュッと目の詰まった生地のオリジナル商品が完成したのです。

 

プレーンのほか、抹茶あずきやくるみ、チョコ、クリームチーズクランベリーなど、バラエティに富んだ味わいも人気の理由。温泉の恵みがもたらした美味しい幸せが噛むほどに滲む、湯のまちのベーグルをぜひお試しください。

 

※おんせんベーグルは由布院の温泉を使用し、水質については第三者機関にて検査し安全を確認しております。また、使用に関しては保健所より許可をいただいています。

2024年12月3日

草庵秋桜 四季工房

ガラス瓶の中で野菜や果物が宝石のようにきらめくピクルスは、食べずにそのまま飾っておきたくなるほどの愛らしさ。けれど素材本来の美味しさをそのまま閉じ込めた商品は、キュートな見た目に反して栄養価も抜群です。由布院土産としても人気を集める、こだわりの専門店を訪ねました。

採れたての野菜や果物のみずみずしさを、そのままぎゅっと1本のガラス瓶に詰めた人気者を求め、由布院観光のメインストリート・湯の坪街道へ。カフェのようなショップに到着すると、店内には種類豊富なピクルスがずらりと並び、瓶の表面にはカラフルな素材がゴロゴロと覗きます。

目移りするラインナップに心奪われていると、やはり気になるのは由布院ピクルスが生まれた理由。工場長岩本真弓さんにお話を伺うと、商品が誕生した背景には、ショップの運営元である温泉宿『草庵秋桜』の強い想いがあることがわかりました。

 

それは1987年の創業以来、“料理の美味しい宿”として親しまれる宿ならではの愛。

お客様に地の食材を使った美味しい食事を提供できるのは、どんなときも自然と向き合い、農に従事してきた人々の存在があってこそ。それならば宿が生産者の生活を支えるべきだと考え、ピクルス用の食材を彼らから買い取ることにしたのだそうです。

 

そして2015年に店舗をオープン。月日の経過とともにショップの認知度も高まった現在は、移り変わる気候や在庫の関係もあり、全ての商品に由布院の食材を使用できていませんが、生産者の方々への感謝の気持ちは変わらず、できる限り大分の食材の使用を心がけていると言います。

返礼品の中でも岩本さんのおすすめは、食べ比べセットの中で楽しめる「タケノコ・フキ・ワラビのピクルス」。これら3つの山菜は全て地元の山で採られたもので、独特の苦味のある春の味は、山や集落のことを知り尽くした名人にしか収穫することはできません。

「体力と経験の必要な山菜採りを行う方は年々少なくなっています。高齢化も進んでいるので、今は山菜を届けていただく度に感謝の気持ちで胸が一杯になります。だからこそ、1人でも多くの人にこの味を知ってもらえたら嬉しいですね。生産者の皆さんにとっても、それが1番のやりがいに繋がるはずですから」。

口に含むとシャキシャキとした食感とともに、山菜特有のほのかな苦味を含んだ香りが鼻を抜けていく大人味のピクルス。お酢に含まれる有機成分によりクエン酸回路が活発になり、代謝アップや疲労回復、スタミナアップの効果も期待できるそうですよ。

2024年4月24日

天然炭酸水Silica99 500ml×24本

2023年3月9日

ふるさと納税基金の状況について【令和3年度】